高額商品なのだから当然だ!と言われるかもしれないが、
それでもこの完成度は見事だ。
マクラーレンの720S。“やらしい”言い方をするなら、
その製品としての完成度はもちろんのこと、
リセールバリューを含めた商品としてとても魅力的。
それは、リシャール・ミル、パテック、バーキンのようだ。
しかも、人の目を惹きつけるこのスタイルを乗りこなせたときは、
最強のステータスとカッコ良さを与えてくれる。
それはフェラーリやランボルギーニなどのスーパーカーとは
少々異なる世界観。というのも、
マクラーレンは手作りで仕上げる少数生産モデル。
東京の繁華街でもそうそうお目にかかれるものではない
希少性が魅力に加わる。それでいて性能は、
何度もF1でシリーズチャンピオンに輝いてきた
マクラーレンレーシングが持つ
最高の技術が導入され保証されている。
例えば強めのブレーキを踏むと、
大きなリアウィングがグイッと迫り出し、
エアブレーキを掛けるとともに
リア部を空気の力で押さえつけ、
太いリアタイヤで強力なストッピングパワーを発揮。
もちろんそれは姿勢変化も抑えてくれる。
さらにエンジンの吹け上がりや力強さ、
刺激や高揚感そして気持ち良さも格別。
カーボンファイバー製「MonoCageⅡ」と名付けられた
軽量かつ高剛性なシャーシに支えられた足回りは
電子制御で的確に動き、
かつ空気の中なに道を作り安定させるような空力性能が
相まって、路面に吸い付くように走る特性も見事だ。
一般道ではまず使わない方が良いが、
サーキット用モードとも評される
トラックモードにしたときなど、
激しく鋭く心を刺激する吸排気音とともに、
アクセル操作に俊敏に反応するエンジンに加えて、
パドル操作に遅れずに行われる歯切れの良い変速だけで、
発狂したい気持ち良さとともに、
無駄に加減速をしたくなる誘惑にかられる。
ちなみに、4.0LのV8ツインターボによる最大出力720ps、
最大トルク770Nmのフル加速力は、
停止状態から100km/hまでを驚愕の2.9秒でこなす。
しかも4輪駆動ではなく、
ハンドリングに優れた2輪駆動で、
この俊足を実現しているのだから、
どれだけ運動性能が高いかはスーパースポーツモデルに
詳しい方ならすぐに理解できるだろう。
そして最も驚くべきは、
これらパフォーマンスを日常使いが可能な快適性や
使い勝手を備えながら得ていること。
2人程度での旅行なら、フロントにある荷物室と
シート後方の積載スペース(570Sには無い)を使えば、
余裕さえ得られるはず。
また乗り心地が良いのが大きな魅力。
前述した加速力を2輪駆動で発揮するのも、
足回りがしなやかに動いて路面の細かな起伏を
タイヤが的確に捕まえているからに他ならない。
言うなれば、跳ねることなく
タイヤを路面に的確に追従させる足回りは、
乗員にも優しい。
またレバー操作ひとつで車高を上げられて、
駐車場入り口など通常のクルマが走れる場所なら
問題なく走れるのもマクラーレンの良いところ。
このような造りにより、
スポーツカーに乗り継いできた方は当然として、
初めての方でもストレスなく乗れてしまうはずだ。
最後に、いまマクラーレンはアルティメットシリーズ、
スーパーシリーズ、スポーツシリーズの3種類を
ラインナップ展開している。
今までの経験上、どれも人の注目を浴びる覚悟さえあれば、
普段使いできる実用性を持ち合わせるでは。
その中でどのモデルがオススメか?
その選択に対しては、価格はもちろんだが
スポーツ→スーパー→アルティメットと
“その気に”なったときに得られる速さや刺激、
かそして気持ち良さが違うので、
それを基軸に選ぶと良いだろう。とは言っても、
アルティメットのMclarenSenaは世界的に希少性が高く、
手に入らないので、実質720Sが今の頂点。
そうなると同ベクトル上で性能が上がるのだから、
価格相応にスポーツシリーズの570Sよりも、
スーパーシリーズの720Sの方が魅力的なのは当然だろう。
それぞれでもっとキャラクターを分けてくれれば良いのだが、
乗り比べたら明らかに720Sが良すぎると思う。
文●五味康隆
マクラーレン