このブログに試乗インプレッションを書くことは基本的にしてこなかったが、今回は我慢できずに書くことにした。
ランボルギーニが手がけたSUV「ウルス」の実力が想像を大幅に上回るものだったから。
そもそもウルスは昨年より市場導入が始まった。ランボルギーニ初のターボエンジンを積んだことでも注目を集めたが、同時に2ドアのミッドシップクーペしかラインアップしていなかったランボルギーニがSUVを導入したことでも大きな注目を集めた。
その実力はカタログ栄えするもので、4ℓV8をツインターボで武装したエンジンは、最大出力650ps、最大トルク850Nmを発揮する。そこに8速ATとトルセン式の4輪駆動システムを使うことで、停止状態からたったの3.6秒で時速100kmに到達する。ちなみにその最高速は305km。ランボルギーニなら当然のスペックと思うかもしれないが、クルマを前にすると最初の驚きがある。なぜなら全長5112、全幅2016、全高1638mmのボディサイズは想像を越える迫力と巨体感を備えており、重量は超ヘビー級の2200kg。これで述べたカタログ性能を得ている?と疑いたくなる。
しかし、当然のことながら走り出してアクセルをひと踏みすれば、そのスペックに嘘偽り無いことは肌身で感じられる。特に走行モードをコルサ(サーキット)にしてアクセルを踏みきった刺激は、ウラカンなど2ドアのランボルギーニ達と遜色無いレベルにある。
2,2トンボディを力業で加速させるV8ターボエンジンの高出力&高トルクに加えて、耳に届く激しいエキゾーストノート、変速のたびに体に激しく伝わる変速ショック、そこに加速感がより強く得られる高い着座位置が相まることで、暴力的という言葉を使いたいほど刺激に満ちあふれるからだ。要は刺激を、軽さ×圧倒的な加速で得る2ドア系ランボルギーニに対して、重量級×暴力的な加速で得る4ドア系ランボルギーニかで、得られる非日常感が異なるということ。
ちなみにウルスの暴力的な加速力には、不思議なほど不安感が無く、その暴力性を気持ち良く肌身で抱くことができるのが魅力。前後のトルク配分40:60を基軸にして随時最適に駆動力が調整される専用の4輪駆動システム。後輪の左右タイヤの駆動力を自在に操り旋回力を操る駆動系ベクタリング機構に加えて、リアタイヤを最大切れ角3度の範囲で動かして車両の安定感を底上げするリアステア機構。電子制御で旋回中の車両の傾きまで抑制する機構も取り入れている。それによりタイヤは一切滑らず、無駄な姿勢変化を抑えながら、視界は高く見晴らしの良い景色が広がっているのに、並のスポーツカーでは全く叶わないレベルの旋回能力や運動性能を発揮。それら運動特性の全ての源に、フロント285mm、リア315mmの極太タイヤのグリップがあると思いきや、それも全く違った。
最大斜度30℃という普通の心の持ち主なら絶対にこのウルスでは行かないタイヤのグリップ力が期待できない “じゃり道”の急な斜路を、途中で停車してからの再スタートを含めて、一切のスリップを発生させずに走るのだ。人が感じないレベルでの各車輪速センサーをセンシングして、緻密にエンジントルクとブレーキ制御をしているからこそ実現できる驚きの特性。これを制御感無しで実現しているのが、玄人眼では驚異的だし世界最高レベルの制御技術にも感じたのだ。
考えてみたら、中東の富豪の為に作りあげたクルマでもあり、2,2トンの車体で砂漠を駆け回れる性能を持たせているので、このレベルの走行シーンなど苦でもないのだろう。このような走りの良さに加えて、リアタイヤが3度動いて、最小回転半径が5m台という…ボディの大きさからはイメージしづらいほど小回り性能も備えているし、電子制御サスペンションにより乗り心地の良さまで備える。
正直、SUV人気に乗じて出したクルマだろ…とか、背の高いランボルギーニなんて…という若干斜に構えて捉えていた節があったが、ウルスの万能的でスーパーな性能を前にすると、一台持ちなら間違いなくこれがオールインワン的なベストスーパーカーだと心から思えたのだ。
五味康隆・文