フェレンツェ、ピッティの取材だった。
撮影はNGだったが、やっぱりクチネリは素晴らしかった。
贅沢な素材を、カジュアルでとことん使う。
おまけに新しい技術を駆使しまくって、
天然素材は、それまでにない生地になっていた。
原点回帰にも思える柔らかい優しい色使いもよかった。
やっぱりクチネリだ。
ベルベストもよかった。
ドレスの世界に、新しい風吹かせるだろう。
個人的な話だが、ベルベストとは新しい取り組みをしたいと思ってる。
帰国して攻めたい。
微差と言えばそれまでだが、チルコロ1901もよかった。
昨年発表されたカシミアタッチが、さらにその精度を上げた。
化繊を使ったスウェット地を使ってテーラード。
触ると、その名のとおりカシミアのような風合いを出していた。
このチェックもこう見えてスウェット!であり、
そこに転写プリントしている。
絶対に見えない。
滑らかな生地が、さらにはカシミアの風合いを出している。
トリックだ、これは。
ストレッチ性も高く、よく伸びて、身体に馴染む。
ステアリングを思いっきり切っても、窮屈な思いなどしない。
僕はチルコロ1901を、ドライビング・ジャケットと呼んでる。
数年前に袖を通して、驚いた。
それはトッズのドライビング・シューズを履いた時以上のものだった。
チルコロ1901は、1901年、ニット工場として生まれた。
ニットだ、“編む”ことを得意としてきたファクトリーだった。
2009年にこの生地を使ってテーラード・ジャケットを世に出した。
半ば軽い冗談だったと聞いたこともある。
しかし“折る”ではなく“編む”にこだわった。
編む作業は、高度な技術が求められる。
縦糸と、横糸が一定角度で交差して作られるのが織物だ。
スウェットはそうやって作られている。
が、チルコロ1901は、交差ではなく、
網目状、ループを繰り返して編んでいる。
これはニットと同じ製法である。
同社の1世紀に及ぶ技術は、たかが生地を、されど生地にした。
快適さはそのままに、ウールのようなジャケットを作るに至った。
さらにはカシミアタッチまで生むことになった。
もちろん、テーラード・ジャケットの基本に沿った縫製は、
知られたブランドのそれと比較しても劣ることはない。
流行りのアンコン・ジャケットを、さらにリラックスなジャケットに仕立て、
安物なアンコンのそれらを、しっかり否定してみせた。
この手のジャケットじゃ一番だと思ってる。
今では、ジャケットのみならず、
パンツ、コートまで出すトータルブランドになった。
ジャケット以上に、パンツの秀逸さに驚く方もいるだろう。
僕もゴルフのときなどにも穿いている。
化繊は苦手、そんなこと言ってるのは誰だ。
チルコロ1901のカシミアタッチを知ると、そう思えるはずだ。
チルコロ1901
http://www.gentedimare-online.com/ec/html/products/list.php?maker_id=2